2021.01.22

somemore people

すでにあるものに、
自分たちが欲しい「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。

「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景をつくりだしている人々を紹介していきます。
すでにあるものに、
自分たちが欲しい
「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。

「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで
「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景を
つくりだしている人々を紹介していきます。

VOL.8 泉山塁威(1) 小さなアクションから、都市を変えていく 小さなアクションから、都市を変えていく

『今回はこちらで取材をおこないます。』
somemoreを主催している滝口さんから送られてきたサイトのページには、「東京ポートシティ竹芝」という場所について書かれていました。さらに読み進めていくと、『...自然豊かでゆっくりできる東京のスキマ。』という一言に目が止まる。

そう書き綴っていた方は、「都市戦術家」なる肩書きでさまざまな活動に取り組んでいる泉山塁威さんです。

東京の「スキマ」や「都市戦術家」という肩書きについて。そして普段着ている服についてなど、泉山さんのsomemoreを伺いました。 



新橋駅からゆりかもめ線に乗りかえ2駅、竹芝駅に到着します。新幹線や空港など、多くの方が利用する浜松駅も歩いて8分ほどの場所にあります。

あまり馴染みのない駅でしたが、降りてみると自然が多く、ベンチでくつろいでいたり、屋外で仕事をしている人の姿が印象的です。

歩行者デッキを歩いた先に、東京ポートシティ竹芝があります。

竹芝は東京のウォーターフロントの一つのエリア。ソフトバンク本社移転や竹芝駅と浜松町駅が一つのデッキで結ばれることでも注目の開発プロジェクトです。2階から6階には、緑が生いしげるスキップテラスが広がります。ビルの真ん中なのに、木々に囲まれた空間にいて、遠くを見れば海が広がっている景色。すこし不思議な感覚になります。

気持ち良い日差しが入るテラスで、さっそく話を伺います。

 「竹芝エリアに関わりはじめたのは2018年頃からで、僕は竹芝エリアマネジメントのアドバイザーとして参画しました。そもそも、ポートシティ竹芝があるこの土地は東京都のもので、ここを民間事業者が70年間かけて開発・運営するというプロジェクトでした。地域を会社に見立て、どのように経営・マネジメントしていくのかを、70年間という期限を条件として取り組んでいます。」 

70年ですか。正直あまり想像できないですね...。 

「そうですよね。70年後ってここにいる多くの人はいないと思います。 まだ時間はかかると思うのですが、公共空間をいかに活用できるかが竹芝エリアにとっては重要になってくると思います。」 



さらに、竹芝の未来を描く中で見えてくることもあったと話します。

「70年間もの歳月をかけてどのような地域に育つのか。東京を街ごとの単位で見ると、お台場ほど海沿いに行かなくても海があって、オープンスペースもたくさんあるこのエリアは近隣に お住いの方がほっと一息つきに訪れたり、あるいはデジタルデトックスじゃないけれどゆっくり休憩しにくるみたいな安息の場になれば良いのかなと考えています。」 

「そういう機能を担う街が銀座にもほど近い距離にあるということは、東京の『スキマ』といえるんじゃないかなって感じたんですよね。」 

取材をしている今日も、利用している方々は各々の目的をもって、この場所をうまく使っているような印象がありました。 



様々な活動をおこなう中でも、ターニングポイントだったプロジェクトが2つあったと話してくれました。

「ひとつは兵庫県はJR姫路駅北駅前広場を利用したプロジェクトですね。駅前広場って基本的にはバスやタクシーのロータリーを中心とした配置が大半ですが、
市民も観光客もおもてなす広場というコンセプトのもと、市民が安心して過ごすことができる駅前をつくろうというビジョンを掲げ、活動を進めてきました。
たとえば駅前広場の半分ほどのスペースに芝生が生えていたり、半地下広場を中心とした空間 、水が流れるスペースを設けるなど、市民が集える広場を中心に整備されました。
ただ整備をして終わるのではなく、行政と市民が協働で取り組むことで実現できたプロジェクトになったことや、
市民が広場の運営主体となり、自ら愛する広場をつくるための運営に携わることになったこと、
なにより本プロジェクトに終始関わらせてもらえたことは自分にとってとても大きな経験でしたね。」 

「もうひとつは池袋東口のグリーン大通りでオープンカフェの社会実験に関わる機会をいただけたことです。2年間という期間限定で道路空間を活用する社会実験を行いました。どのよう にオープンカフェを運営していくかの議論を誰とするかが重要ですが、誰よりもカフェテナントの皆さんが一番乗り気で参加をしてくれたのです。」 

「オープンカフェ社会実験の運営について議論しながら実験をし、地域の方々にも実際に体験してもらうことで実感をしてもらえた。会議に時間をかけることも大事ですが、それ以上にアクションしてみたほうが早いことを経験しました。ここでの経験が、のちにタクティカル・アーバニズムと共通していることだったり、今も継続して取り組んでいる、パブリックスペースに特化したwebメディア「ソトノバ」をはじめるなど、都市を豊かにする様々な活動を行うきっかけとなったプロジェクトです。」 

小さなアクションからムーブメントを起こし、都市を変えていく。

街や地域の未来を見据える泉山さんの言葉と行動には、穏やかさと心強い存在を感じました。 

(次回に続きます) 

取材協力:東京ポートシティ竹芝
Photo:小財美香子 Text:浦川彰太

泉山塁威(Rui Izumiyama)

1984年北海道札幌市生まれ。日本大学理工学部建築学科助教/一般社団 法人ソトノバ共同代表理事・編集長。 日本大学大学院理工学研究科不動産科学専攻博士前期課程修了、明治大 学大学院理工学研究科建築学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。認 定准都市プランナー。アルキメディア設計研究所、明治大学理工学部建 築学科助手、同助教、東京大学先端科学技術研究センター助教などを経 て、2020年4月より現職。 専門は、都市経営、エリアマネジメント、パブリックスペース。タクテ ィカル・アーバニズムやプレイスメイキングなど、パブリックスペース 活用の制度、社会実験、アクティビティ調査、プロセス、仕組みを研究 ・実践・人材育成・情報発信に携わる。 主な著書に、「楽しい公共空間をつくるレシピ」(共著、ユウブックス 、2020年)、「ストリートデザイン・マネジメント」(共著、学芸出版 社、2019年)など。

Webサイト: https://lnk.bio/ruilouis
Twitter: https://twitter.com/RuiIZUMIYAMA
Instagram: https://www.instagram.com/ruilouis/
ソトノバ: https://sotonoba.place/