2019.12.06

somemore people

すでにあるものに、
自分たちが欲しい「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。

「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景をつくりだしている人々を紹介していきます。
すでにあるものに、
自分たちが欲しい
「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。

「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで
「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景を
つくりだしている人々を紹介していきます。

VOL. 04 棟廣祐一(1) 仕事も生活も、面白いことで満たしたい 仕事も生活も、面白いことで満たしたい

今回話を聞いたのは、手帳や雑貨を取り扱うメーカー「HIGHTIDE(ハイタイド)」の棟廣(ムネヒロ)祐一さん。現在はロサンゼルスを拠点に活動しています。 

「出たり入ったり、気がつけば15年近くもこの会社にお世話になっています。」  
 
淡々と話す棟廣さんの言葉から感じたのは、境界をあまり感じないという事。仕事も生活もどちらも同じくらい楽しそう。その根底には何があるんだろう。何事も楽しむハイタイドの精神を、東京は恵比寿の支社でお聞きしました。  


 
20年ほど前、もともとは営業職で入社した棟廣さん。その後商品企画に携わり、11年ほど勤めた後、ひとつの転機が訪れます。  
 
「ちょうどその頃、ご縁があって糸井重里さんが主宰する『東京糸井重里事務所(現ほぼ日)』に転職することになりました。そこで働いていた時期は自分にとって大きな転機でしたね。」  
 
さまざまなものづくりをはじめ、商品の伝え方、働き方など…。ほぼ日では、ちょっと見方を変えることであらゆる物事が新鮮に感じられました。   
 
「ほぼ日での4年間は、会社で働くという感覚よりも、学校に入ったような気分でした。それまでは商品を買ってくれるお客さんや卸先が、ぼくらメーカーよりも立場的に絶対に上だと思い込んでいたんです。しかし、ほぼ日での働き方は組織やお客さんに対して良い意味でフラットでした。なによりも糸井さんの言う“クリエイティブがイニシアチブを持つ”ということを身をもって学びましたね。自分で面白いことを発信し続ければ、自ずとお客さんも付いてくるということを実感しました。」 
 
「お客さんと商品の関係を見て、なんだかとても楽になったんですよ。そうだよなって自然と納得している自分がいました。」 
 
面白いことを発信し続ければ自ずとお客さんも付いてくる。だったら、今まで自分が面白いと思っていた物でも実践してみたいと思うことも不思議じゃない。   
 
「そんなとき、古巣であるハイタイドの創業社長から『会社を一新するんだけど、また一緒にやらないか』と連絡をいただいて。以前とはまた別の形でハイタイドの役に立てるかもと思って戻ることにしました。」 


 
再びハイタイドに戻ってきてまず取り組んだのは、福岡で直営店を開くことでした。  
 
「ハイタイドは卸業をメインにしているので、スタッフも実際に商品を購入してくださるお客さんの顔が見えないまま各々仕事をしていることが勿体ないと思っていました。また、福岡で創業して25年になるのですが、ハイタイドのことを知っている地元のひとの数は決して多くはなかったんですよね。」 
 
自分がいた場所を一度外から眺めたからこそ見えてきた課題。そうして2017年に福岡の本社の元倉庫だった1階を改装し、直営店「HIGHTIDE STORE」をオープンしました。  
 
「ただのメーカーのアンテナショップという位置づけではなく、ちょっとしたドリンクを出して、友人や近所の人が気軽に寄れるたまり場みたいな場所を作りたいと思いました。あと、福岡には個人で面白いことをやっている人が多かったので、そういう人たちをつないで新しいことが生まれるプラットフォームのような場所にもしたかった。」 
 
「店舗を手掛ける経験は皆無だったので、実際にお店を動かしてみると、文具って売っても売っても儲からないなあとか、数字や目で見えない価値の部分を社内で共有することのむずかしさだったり、モヤモヤすることも多々ありました。だけど、徐々にお客さんも売り上げも増えて、今まで接点がなかった異業種とのコラボレーションの話なんかもいただけたり、場所が持つことの意味合いはスタッフのみんなも感じてくれてると思います。」 
 

 
「それから色々あって、アメリカにも会社と直営店ができたんです。」と、話は一気に飛躍します。  
 
「2017年の暮れにロサンゼルスのダウンタウンにあたらしくできた商業施設に出店しないかと知人から話を持ちかけられて。小売りだけでは難しいけれど、アメリカでの出店を足掛かりに海外での卸売りを自分たちでやってみたいと思いました。というのも、国内の雑貨市場は大手が次々と地方へ出店する流れが増えてきていたんです。そうすることで個人規模でやっているいいお店がどんどん減ってきてしまって、大手の食い合いみたいななかでうちも売り上げも伸び悩んでいたし、大手での売れ筋を追う流れがうちのものづくりにも出てきていました。同時に海外からの引き合いも少しずつ増えてきていたタイミングだったので、遅かれ早かれ外に出ていかないといけないだろうなと漠然と感じていたのと、新しい場所で自分達がやってきたことを試してみたいと思うようになったんです。」  
 
とはいえ、国も文化も異なる場所での出店は、国内での出店とは大きく訳が異なりました。 
 
「何もかもが未知で、勢いだけで出てきてしまったので、海外で商売をするにはまず現地法人を作らなくてはいけないということも恥ずかしながらアメリカに行ってから知って。まず、急いでアメリカ法人を立ち上げました。店舗はすでにテナントの場所は決まっていたのですが、内装を進めるにあたっても、どの業者がいいのか、どういう工程を踏んで、どこにどういう許可を取らないといけないのか、誰に何を相談すればいいのかすら分からなかった。結局、地元福岡で懇意にしている工務店の社長が協力してくれることになって、一旦全部日本で作った什器や内装資材を日本からコンテナで運び、施工も工務店の社長はじめスタッフの方々がアメリカまで来てくださって、みんなで一緒にアメリカで組み立てました。」   
 
「それでも途中で検査員が視察に来ては工事を止めろと言われたり、材料について何度も確認されたりして。結局現場でも何度もホームセンターに資材を買いに走って、修正箇所は現場で作るというかなり骨の折れる作業でしたね。」   
 
ようやくお店がオープンしたのは、2018年の夏。 
 
「なんだかんだ壁にぶつかりながらも、いろんなひとに助けられてなんとかオープンして今に至ります。オープンから一年ほど経って、徐々にお客さんも増えてきて、わざわざ車で3時間かけてお店にきてくれる方もいました。」 
 
お店を通して、なんだか楽しそうなことをやっているなって印象が生まれたんでしょうね。 
 
「思えば、ほぼ日でも自分達が面白いって思うようなことを実行して、それに人が引き寄せられて。そんな循環をハイタイドでも作ろうと思ったのかもしれません。」 
 
(次回に続きます) 

Photo:小財美香子
Text:浦川彰太

棟廣祐一(Yuichi Munehiro)

株式会社ハイタイド取締役、HIGHTIDE USA INC.代表。大学卒業後、中南米専門の旅行会社勤務を経て、株式会社ハイタイドへ。営業、商品企画職を経て、東京糸井重里事務所(現株式会社ほぼ日)にて4年間ほぼ日手帳の製作にかかわったのち、2015年から株式会社ハイタイド取締役として復職。福岡をベースにハイタイド直営店HIGHTIDE STORE、CORNERSHOPの立ち上げ、地元のアーティストや企業とのコラボレーションを積極的に行う。2017年にアメリカにHIGHTIDE USA INC.を立ち上げ、翌年、ロサンゼルスダウタウンにHIGHTIDE STORE DTLAをオープン。