今回、お話を伺ったのはイラストレーターのナガノチサトさん。ナガノさんにはsomemoreの次シーズンを飾るビジュアルを描き下ろしていただきました。その絵を囲むようにして座り、ざっくばらんに話を伺っていきます。 「2019年の夏ぐらいかな、ブランド名の「somemore(もうちょっと)」をイメージした絵を描いてくださいって依頼をいただいて。私の中では『もうちょっとで届く』っていうイメージがありました。」描かれている服は実際のsomemoreの服ですね。描きどころはありましたか? 「今回、ひとつの要素としてsomemoreの文字を入れてみたんです。この文字は一番最後に描いたんですけど失敗したら全部やり直しで危険だから、緊張しましたよ。普段は作品の中に文字を描くといったこともしないので。一気にいかないと迷ってしまうと思って一発描きで。それこそ「somemore(もうちょっと)」な気持ちでがんばりました。」一発は緊張しますね。しかも中央にでっかく置くというのは。 「まっすぐに直線だと真っ二つにされてる感じもあるし。ただ、こう斜めに入れると形と形が重なってまた別の形が表れるような感じがしていて。そこがsomemoreの立ち位置と合うのかなあって。」ナガノさんがsomemoreをどう表現してくださるのかとても楽しみでした。
どれくらいで仕上げたんですか? 「丸一日この絵を描くってことはないんですけど、合計してだいたい六日間ぐらいかな。ボールペンも4、5本使いきりました。ちょっとずつ塗りつぶして。」大変ですね‥‥。ボールペンは何を使うんですか? 「めちゃくちゃ大変でした(笑)。ボールペンはみんな一回は使ってるんじゃないかな、シグノのボールペンです。3年程前までは鉛筆だったんですけど、描いてるうちに自分の手で消しちゃったり滲んじゃったりとかあって。それが味になったりもするんですけど今はくっきり残る形が気分ですね。高校生の頃は油性マッキーとかで描いてました。」高校生! 絵を描きはじめつづけたのはいつ頃ですか? 「「描きはじめた」っていうのはすっごい小さい頃からで。ずーっと何かしらの延長線上でやってて、中学の頃に絵を描く仕事につこうと思って、美術に特化してる高校に入学したんです。高校では知識が豊富な人もいましたが、私は道具や絵の書き方ひとつとっても初めてのこと事ばかりで。なんか、私の周りにはいなかった人がいっぱいいてすごい刺激になって。それから専門学校へ進学して、みっちりやったりサボったり(笑)。卒業後は、バイトをやりながら絵にまつわる仕事をしていましたね。」徐々に今へと結びついてきた。 「次第に仕事が増えてくる中で、『CREA』っていう雑誌から初めて連載のお仕事をいただいたんです。自分の中ではそこがひとつ節目だった気がします。毎月描かなきゃいけないので自分を鍛えられた感覚がありました。筋トレのようです。」一気に作業のペースが上がった? 「一気に上がった…んだけど、仕事の量として一気に増えたわけではなくて、ちょっとずつ増えてる気がします。」 「以前は想像してた仕事の流れと差があったんですが、振り返るとこれで良かったんだなって。一気に増えても、力量も描く意味での筋トレもできてない状態だったんで、いっぱい来たらきっと受けきれなかった。だから、筋肉のつき具合を見られているのかなと思ったんです。それに合わせて依頼も来ているのかなって。今は着実にもらったことを丁寧に返していけば次につながるってすごく実感しています。」少しずつ積み重ねていったものがつながっている。 「本当にご縁なんだろうなと思います。昨年は想像もしていなかったことが毎年のようにあって。こんなお仕事できるんだとか。今のこの状況ももちろんそうですね。」この状況を想像していた人は一人もいなかったと思います。 「でもこういう時のために、SNSをやってるのもあって。一瞬の娯楽かもしれないんですけど、コツコツ更新していたら『ありがとうございました。いつも楽しみにしています。』っていうようなメッセージをいただいたんです。メッセージを送った方の地域も、状況がめまぐるしく変わって不安なはずなのに、暖かい言葉をいただけて嬉しかったですね。」そういう見方をしてくださっている方がいるのは、励みになるというか、とても嬉しいですね。 「そうですね。そういう方が一人でも二人でもいてくれればいいなぁ。自分ができることってなんだろうって思ったんですけど、絵を更新する事で誰かの小さな楽しみが一つでも増えたらいいなと思いました。そんな風に思いながら、私はいつも通り毎日絵を描き続けています。」今後の活動としては何か計画していますか? 「状況が変わらなければ、5月に福島で開催予定です。昨年、岩手で展示しませんかとお声がけくださって個展をしたんです。初対面の方だったんですけど、サイトの雰囲気や頂いたメールの文面から熱量というか、義理と人情じゃないですけど、人柄をすごく感じて。そういうのはとても大事にしています。」個展や自分の絵がさまざまな場所と機会をめぐることで、日々の楽しみを増やしてくれるような役割を担ってくれそうですね。 「たくさんのきっかけになってくれれば。でも、今後描き下ろすときはあまり塗らないと思います(笑)。」 (次回に続きます)Photo:小財美香子 Text:浦川彰太
2020.05.08
somemore people
すでにあるものに、
自分たちが欲しい「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。
「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景をつくりだしている人々を紹介していきます。
すでにあるものに、
自分たちが欲しい
「もうちょっと」をデザインすることで、
快適さや楽しさを提案するsomemore。
「somemore people」では、
仕事やライフスタイルで
「もうちょっと」を形にしながら、
楽しさや新たな風景を
つくりだしている人々を紹介していきます。
VOL. 06 ナガノチサト(1) 絵に寄り添うということ 絵に寄り添うということ
ナガノチサト(Nagano Chisato)
イラストレーター。雑誌の挿絵や装画、WEB、パッケージやフライヤー、
アパレルブランドとのコラボ商品のデザインなどでイラストを制作。
近年では、チーズケーキ専門店のパッケージイラストや商業施設のイメージビジュアルなど幅広く活動中。個展での新作発表も行う。
webサイト:
http://von3.com
Instagram:
https://www.instagram.com/chisato_nagano/