前回の「つくり続けることで見えてきた、Less is Moreなかたち」の続きを本日はどうぞ。
音楽活動以前にはアパレル業の経歴もあったというクニモンド瀧口さん。服についてのこだわりも聞いてみる。
「昔は髪の毛をオレンジにしたり、ラバーソールを履いたり、好きなブランドもすぐ変わったり…なんて時期もありました。服も古着からブランドまで何でも着てましたね。ただ、ある日コーディネートに疲れちゃって、最近はシンプルになってきたというか。仕事に労力を使いたくなってきたことで、どうしても服の優先順位が下がっちゃって。あまり考えたくなくなったのかもしれないね。ビンテージのリーバイス501のSタイプ履いて…じゃあ上にはこれを合わせて…とか。」
「でも服が好きなのは変わらないから、何に興味を持ちはじめたかというと、耐久性や機能性でした。それこそパタゴニアとかノースフェイスといったアウトトドアブランドは一時期すごい着てましたね。」
今回着ていただいたsomemoreのシャツは、ネルシャツの上に柄物のニットベストを着ているようなイメージの、レイヤードパッチワークシャツ。
「僕が持ってるシャツはTシャツの上に着る、サイズ感がぴったりのものばかりだけど、somemoreのシャツはシャツの上からでも着れそうなサイズやデザインの印象がありますね。あと、シンプルだけど細部に工夫が施されているデザインが好きで、グレーのフランネルなんだけどジャガードの柄が切り返しで入ってる一工夫が可愛くていいですね。」
「あと、シャツを選ぶ際に意外と大事にしているのが襟の生地感で。くたっとしていて、立たない感じはあまり持っていなくて。そういった意味ではこのシャツは袖をとおした瞬間に襟の生地がしっかりしていて、綺麗に馴染むなあと思いました。初めて森蔭さんがデザインしたシャツを着ましたが、とても良いですね。」
「時代の流れ的にはタイトなシルエットから2018年頃からボックスシルエットが徐々に流行り始めてきてて。そういう意味ではこういうすこし大きめのサイズは気になってます。ちょうど90年代に着てたパタゴニアなんかも大きめに着ていたので、不思議と今着ても違和感ないデザインなんですよね。昔のパタゴニアとか引っ張り出してきては、よく着てますよ。」
今回の取材時にも大きめのコートを着て登場したクニモンドさん。コートと合わせたサイズのバランス感が印象的でした。
最後に、クニモンドさんにとっての「somemore」な目標を。
「音楽はもちろんのこと服も好きだし、アートも好き。やりたいことはたくさんあります。でね、突拍子もないことやったら面白いかなと思って、10年くらい前にふと俳優になろうかなと思ったことなんかもあったんですよ。結局実現はしてないんだけども、今の時代ってそういうことも実現しやすくなってきた気がします。そんな『何をしたら自分にとって面白いか』ってことは常に考えています。」
「あとは、50にもなるとどうしても慎重になって一歩が踏み出しづらくなってくるので、新しいことに挑戦している同世代を見て素直に『すごいな』って思うことがあります。そこには尊敬もあれば羨ましさもあって。そういう意味では自分の仕事の仕方を改めて考える時期なのかなと思っています。今のこの時代、会社員であることがすべてではないと思うし、『若い人が変なことやってるよ』なんて口出しするんじゃなくて、僕も同じように思い切って何かやってもいいよなって思ってます。」
somemoreというブランドも、デザイナーの森蔭さんがsomemoreだからこそ実現できることをやる、という背景から生まれました。
もしかしたら、その「何か」を探し続ける日々こそが充実し、楽しいのかもしれません。
そして、思い切って何かやってみる事のひとつに、自身の音楽活動もあるとか。
「僕らの世代って、ちょうどいい立ち居位置にいるなと思ってて。上の世代には60代の山下達郎さんや70代の細野晴臣さんがいて、下の世代にはceroの高城くんだったりLUCKY TAPESっていうミュージシャンたちがシティポップをやりはじめてる。ちょうど僕らは中間に位置していて、最後のリリースから10年も経ってしまっているけど。笑 今年は何か出せるように頑張りたいですね。」
Photo:小財美香子
Text:浦川彰太