前回の「仕事も生活も、面白いことで満たしたい」の続きを本日はどうぞ。
現在はロサンゼルスを拠点に働いている「HIGHTIDE(ハイタイド)」の棟廣祐一(ムネヒロユウイチ)さん。実際にこれまで手がけた商品について見せていただきました。
「これは定規の端にクリップの機能を付けた道具です(中)。冊子にはさめば栞にもなります。言葉で説明したら大したことないんですけどね。これなんかはアメリカのホームセンターで売っているギフトカードを入れるブリキのケースを作っている工場の在り型を流用して作りました(右)。このノートはPAPIER LABO.(パピエラボ)と一緒に、寒冷紗っていう製本時に補強で使われる布を前面に貼ってつくたものです。(左)。」
「ハイタイドは自社工場を持っていないので、アイデアを出してオリジナルで作ってもらう製品もあれば、工場が持っている型をベースに色を変えたり、デザインを加えたりして製品に仕上げるものもあります。こういったネタは常に探していますね。」
商品を企画したり探したりするときは、ハイタイドらしさのようなものは意識するんでしょうか。
「よく『ハイタイドっぽいね』と言われることがあるんですが、自分たちでは実感がなくて。卸先も多岐にわたっているので、むしろまとまりがないのではと悩んでいました。意識していたことといえば、ちょっとしたディテールやデザイン、素材感で他と違う演出をしようっていうことです。少し遊び心があるもの、色は少し曇らせてみたりとか。」
普段着についても伺いました。
「プライベートと仕事では、服は全然変えないですね。基本的にはTシャツばかり着ています。あと、ボタンを閉めずに着れるコートや羽織りものなんかが好きです。今回、somemoreのシャツに腕を通して、久しぶりにシャツを着た感覚がしました。」
棟廣さんに選んでいただいたシャツは、タイルをモチーフに仕立てたタイルパッチワークシャツ。タイルと目地の直線と凹凸感を、ネイビーのギンガムチェックとストライプ生地を接ぎ合わせてデザインされています。ポケットは、ペンが入れられるペンポケットと一体型になっています。
「普段はすこしオーバーサイズ気味で着ることが多いんですが、somemoreのシャツはすこしゆとりをもって作られているのか、Mサイズがしっくりきました。普段は古着が多く、その中でもワークっぽいものや軍ものに惹かれます。なんとなく前使っていた人の雰囲気を感じられるクタッとした感じが好きで。新しいものを買うときも、シンプルなものよりもちょっと遊びが感じられる物が好きかもしれません。」
話を聞いていると、何事も商品を選ぶような見方をしているように感じます。そんな視点で常に物の見方をしていると、つい仕事のことを考えすぎて疲れてしまいそう。
「それが本当に仕事と遊びの境目がなくて、性格が鈍いのもあってストレスを抱えたことがあまりないんですよね。それでいいのか分からないですけど、あまりくよくよ思い悩むことはありません。もうちょっとオン・オフをピシっと切り分けることが良いのかなと思いつつも、自分が生活している中で気づいたことや面白いと思ったことを、仕事を通して人と共有したいという思いが強いのかもしれません。」
「あと、基本的に気になったら動いちゃうんですよね。アメリカの出店も同じで、面白そうだなと思ったら、結果が想像できなくても片足突っ込みたくなっちゃうんです。」
まだ見ぬものに出会いたいという好奇心がそうさせているのかもしれません。最後に棟廣さんにとってのsomemoreな目標を教えて下さい。
「ハイタイドや日本の文具・雑貨のメーカーが日本でやってきたことを、アメリカで紹介していきたいということですね。アメリカってすごく合理主義で、文房具については書ければ良いっていうスタンスなんです。だけど、文房具を使って感じるフィジカルさというか、自分で書いた文字を見返したときに、書いた当時の気分や調子が蘇ってくることってありますし、そういうアナログの強さってスマホやPCが便利になっても相変わらず備わっていると思うんです。それって、日本人だからとかアメリカ人だからとか関係なく、人として備わっている感覚だと思うんですよね。文房具を売っているってことはそういった見方も売っているんだっていう気持ちもあります。」
somemoreのコンセプトにも、ちょっと気持ちが上がるというコンセプトが込められています。普段使う道具や服をちょっと充実させることで、日々の生活や仕事を満たしてくれる。somemoreとハイタイドの素直な気持ちは重なっているように見えました。