今回は、今期のブランドイメージビジュアルを描いたアーティストの牛木匡憲さんにお話しを伺いました。
漫画やアニメ、特撮などの表現をベースに時代や媒体に合わせたビジュアル表現を発表し続けている牛木さんは、常に新しいスタイルを更新し続けていると話します。
「イラストレーターという肩書きひとつとっても、同じ内容の仕事をしている人はいません。先輩と同じことをやっても成功はないし、去年の自分と同じことをやってもダメだと思っていて。ロールモデルがあるようで、実は常に絶妙なバランス感覚が求められると思います」
たとえば、インスタグラムで毎日更新しているポートレートシリーズ『VISITORS』は、仕事とは関係ないところからはじめましたが、今ではさまざまなグッズや企画へと展開されています。
「『VISITORS』シリーズは毎日更新しているので、大変だなと思う日もあります。だけど、そういうときこそもうちょっと頑張ることで自分の限界を超える瞬間に出会えるんです」
『もうちょっと』と積み重ねてきた努力は、思いもよらぬ仕事へつながっているそう。
「『VISITORS』はでんぱ組.incのCDジャケットからテニスコートのコントライブビジュアルへとつながり、さらに別の仕事へとつながっていきました。想像もしない仕事へと導かれるのは、良い化学反応だと思いました」
「でも、結局は化学反応のような目に見えないチカラに背中を押されている気がします。そういうチカラをいくつ持てるかが、形のないものを表現する世界では大切なように思いますね」
ビビットな色彩が目を引く今回のイメージビジュアルについても話を伺いました。
「勝手なイメージですが、クリエイターって全身真っ黒になりがちですよね(笑)。僕自身、昔は花柄や宇宙柄といった派手な服が好きでよく着ていたのですが、年を重ねるにつれて似合わなくなってきていました。とはいえ、全身真っ黒も自分らしくない。」
「somemoreのシャツは手仕事感や細部にこだわっている気持ちがデザインから伝わってきて、ちょうどいいなと思いました。メインビジュアルに描いたイラストは、somemoreの服を着たときの気持ちを表現しています」
全身を描いたイラストのシリーズには、他にもこだわりが。
「遠くからみたとき、最初に柄の印象が入ってくるような工夫をしています。なので女性を描いてもマスクをつけたり目だけの描写だけだったりと、『VISITORS』とは逆の表現をしています。あとは戦っているような、勢いを感じる前のめりの姿勢が多いです」
さいごに「もうちょっと(somemore)」先に描く目標についても伺いました。
「一石を投じる仲間というか、チェンジメーカーのような立場の人を見つけたいと思っています。今、小さな業界を大勢が争っている状況で、新しい領域を広げようとする人が少なくて。上の世代も自分たちがトップでいるようなピラミッド構造を保ち続けている気がして。嫌われてでもいいから、あたらしい領域を開けていきたいなと思っています」